忍者ブログ
'07.2.8開設。唄を愛する水月の日常生活。
2024 / 05
<<    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31  >>
[89] [88] [87] [86] [85] [84] [83] [82] [81] [80] [79
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。







「ちょ、それ以上食べるとお財布が…!」
一種の助けがやっと冴香の耳に届いたのか、目の前にあるラーメンの皿の中に残っていた汁を一気飲みすると、やっと食べるのをやめた。
冴香は少し物足りなさそうな顔をしていたが、それ以上は注文しなかった。
美香はため息をつくとトボトボとカウンターへ会計を済ませに行った。

「8657円になりまーす」

その声と同時に美香の後ろを通過しようとしたいた冴香は、ドス黒い笑みの美香に絞められていた。
「ちょーっとどーゆーコトかなぁ、さ・え・か・ちゃん?
従業員はあたふたして、美香はどんどん絞める力を強め、冴香はタップしていた。
冴香がポテッと落ちると美香は「あ、いけないいけない」と頬を赤らめながら会計をすませていた。
他の従業員がすぐさま冴香に呼びかけなどをしていたが、少し経つとガバッと起きた。
無理矢理立つとふらついて転んでしまっていた。
お店を出るときに、他の客がみんな2人を見ていたのと、従業員の声が呆気に取られていたのは定かではない…。
お店を出ると寂しい財布を確認した。
残高は624円。原因は紛れもなく冴香の食いすぎだった。
冴香は半泣きで噎せながらブツブツと言っていた。恐らく美香の悪口であろう。
「ちょいと、そこのお嬢さん等」
不意にビルとビルの間から老婆の声がした。が。
「もう、食べる量気をつけてよね」
「ごめんごめん。だってあそこの超・激辛ラーメン最高に美味いもん」
100%スルー。
思わず老婆も声を荒げる。
「ちょいと!お聞きになりなさいな!!」
2人が気付いて互いに顔を見合わせると、美香が一歩前に出た。
美香が話しを聞くようだ。まぁ本人は聞く気無いでしょうが。
しかしそんな考えは吹っ飛んだ。
「お嬢さん等、ゲーム参加者じゃないかい?」
一気に2人の顔色が変わった。
もしかして、ゲーム参加者かと思ったのだが。
「あたしゃ元参加者だよ。あたしも第2回のゲームに参加したんだよ…」
老婆は語り始めた。
その話は今とは明らかに違いすぎていた。






誰もが振り向く風に靡く銀髪と、透き通るような青い瞳。
小柄な割りにはその瞳に強い意志をまとっていた。
綺麗な黒い服を着た少女は人込みをさっさと歩いてゆく。
中には見慣れた顔もあったが相手は覚えていないだろうと思い、すれ違う。
そんな中奇妙な気配がした。
(またアイツラか…?)
視線の先には見間違える筈も無い、姿も雰囲気も昔とそのままの少女がいた。
「亜…癒美…っ!?」
一目散に駆け出した。





「今の話、本当…?」
美香は愕然とした。
そんな事があったなんて。そんな人がいたなんて。
「ねぇ、信じられる?冴…香……?」
あれ?おかしくね?と美香が思ったのは間違いではない。
だって冴香の肩になんかがへばりついているんだもの♪
「美香、この状況下でどうしろと?」
とりあえず美香は何も言えず笑ってごまかしてみた。
ゲーム参加者にしか見えないのが不幸中の幸いだ。
冴香は気持ち悪くて身動きさえ出来ない。
背中から肩・首筋にかけて「ずるっ」という音と共に這っている。
「たすけてぇぇぇぇ………ぇっ!?」
這っていた生物がスッと体から離れ、悲鳴にならない悲鳴を上げた。
「大丈夫?」
女の子が右手にモザイクレベルの物も持って聞いてきた。
「あ、うん。ありがとう……ってえええ!?」
冴香は酷く驚き、美香がビクッと体を強張らせた。
「今度は何ぃっ!?」
「あ、いや。右手の(ぴーーーーー)みたいな生物が…」
冴香がそう言うとこんどは老婆が驚いていた。
「おまいさん…フィーじゃないのかね…?」
手を震わせながら言った。
「久しいね、佐波(さわ)」
少女はにこっと微笑んだ。


8話   10話

目次

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:



TW
実はかうんた。
Designed by shiena
忍者ブログ [PR]