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'07.2.8開設。唄を愛する水月の日常生活。
2024 / 05
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「やはりフィーであったか…」
老婆はため息をついた。
冴香は黙っており、美香はわけがわからないようだった。
フィーは美香の様子に気付き、ペコリとお辞儀をした。
「美香さん初めまして。フィーと申します」
微笑んでいる様子は天使のようだったが冴香は気に入らなかったようだ。
冴香は顔も向けずに冷たい態度をとった。
「お子様が私たちに何の用ですかー?お子ちゃまはおうちでママと絵本読んでなさい」
なんとも嫌みったらしく言い放った。
それに反応して美香はげんこつで冴香の頭を殴った。
「ちょっと相性が合わないようですね…また今度来ますね、佐波さん」
「あと300年くらいしたら顔あわせてやる」
冴香の言葉を聞いて美香は足を思いっきり踏んづけた。
フィーはにこっと笑顔を見せると足早に人込みに紛れていった。
見えなくなると美香はもう一度思いっきり冴香の頭を殴った。
「いってぇぇぇぇぇえええええ!!!何すんだよっ!!!」
「冴香こそ大人気ないことしないの!!」
美香は相当怒っており、冴香はいつもの調子だった。
冴香は美香の態度が気に入らなかったのか反論した。
「美香は見ず知らずの人と親しくしようとしないの!」
「そういう冴香は極度の人見知りをどうにかしなさいよ!」
「はぁ?なんであかの他人とわざわざ仲良しこよししなきゃいけないワケ?」
「相手に失礼でしょ!しかも子供に向かってまで!!」
「いちいち五月蝿いなぁ、相手なんてどうでもいいじゃんか」
論争はどんどん激しくなり、ついには殴り合いにまで発展し始めた。
老婆は力が無く止められないし、一般人は下手に手を出さないほうがいいと見物している。
冴香の右ストレートが決まると、美香がわき腹に膝蹴りを入れようとするのを回避し、その後に来た右ストレートを頬に思い切りくらってしまい、そしてまた怒りが溜まる。
最終的には警察沙汰になり、冴香が「テメェなんか知るか化粧時間の長いブスなメス豚が!!」と吐き捨ててふくれっ面で何処かへ行ってしまった。
美香は警察のおせわになって、その後宿に帰ったが冴香はいなかった。
「よかった。今度会ったら包丁でブッ刺してやる」とか美香は物騒な事を口走っていた。
一方冴香は薄暗い裏道で治癒していた。
そこに現れたのは先程別れたはずのフィーだった。
冴香は先程とはうってかわってニヤニヤとした表情だった。
「またティファの事かい?ほんっとにお姉ちゃん想いだねぇ…」
フィーはその言葉を聞いて冴香と同じようにニヤニヤしながら言う。
「そういうアンタも懲りないねぇ…そこまでして取り戻したいのかい?」
「アンタが言える台詞じゃないし」
冴香は一瞬苦い表情をしたが、すぐにまた口元を吊り上げてジロジロ見ていた。
2人はしばらく互いをみていると冴香が先に口を開いた。
「どうやら私もアンタの助けが必要なようだし…交渉しない?」
フィーはニィッと笑うと冴香と笑っていた。





足音が響き渡る暗く、とても広い部屋の主は今日は出かけていた。
歪んでしまった主。
その時彼女を助けてあげられなかった、非力な自分。
そして今も事実から逃げ出している自分。
あるヒトは主を助けるために戦い続けている。
あるヒトは失くしたモノの為に、主を殺す為に戦い続けている。
2人は矛盾しているのにいつも仲良しで、笑っている。
【ライバル】じゃなく、【親友】として。
ボクらもそうだった。いや、それ以上だった。
あの時自分が止めていれば…。
今頃このゲームは完全に無くなっていただろう。
たった1つの希望は絶望に包まれ、染まった。
どうか、彼女を救ってあげてください。
自分の戦う術は、そう易々と使ってはいけない。
やがて主が帰ってくるだろう。
それまでに、この涙でクシャクシャになった顔や髪を元に戻さなければ。
少年は部屋を後にした。




9話   11話

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